日本一に登ろう!そう思い立った時から富士登山はスタートする。
富士山に登るために、登山前日までに準備しておくこと。
ここではその心得を紹介します。

富士山の一般的な登山適期は夏の7〜8月。しかし、登山者が減る9月も空気が澄んですてきなシーズン。
冷夏などの異常現象と台風をのぞけば、この間天候は比較的安定している。ピーク時期は、梅雨明けから8
月末までの毎週末とお盆の週。特に週末は金曜の夕方から日曜の正午前後にかけて、登山道には長い列が
でき、山小屋も混雑する。マイペースで登り、確実に頂上を目指すならピーク時期を避けるのが賢明だ。

富士山の主要コースは富士吉田口・河口湖口・須走口・御殿場口・富士宮口の5つ。このうち
標高差が大きい御殿場口は経験者向きで、はじめての富士登山なら河口湖口・富士吉田口がおすすめ。
体力度で選ぶには登山口から頂上までの標高差・コース距離・歩行時間から判断する。
ただ、はじめての富士山では体力度とはいっても未知数が多いもの。そこで、交通や宿泊地など自分にとって
スケジュールを立てやすいコースであるかも考えてみよう。スケジュールに無理さえなければ
どのコースも体力度にそれほど大差はない。
頂上までのコースタイムは往復8〜9時間。がんばれば何とか日帰り出来そうだと思える時間だ。
しかし、富士山は一気に登ると高山病にかかりやすく、頭痛や吐き気などの症状があらわれると
登頂は厳しい。また、高山病は基本的に体力や経験にかかわりなく、誰にでもリスクがある。
そこで高山病を予防し、登頂成功を期すには山小屋を利用した1泊2日の行程を組もう。
通常、6合目〜8合目の山小屋に一泊し、体を高度に慣らしてから登頂する。
日本一の富士山に登るにあたって、やはり気になるのは体力。登山計画を立てたら、なにか
トレーニングをしたほうが良いのではないかと思う人もいるだろう。しかし、登山直前の1〜2週間
での体力アップは現実には難しい。無理な運動はかえって過労や体力不良の原因にもなる。
そこで、登山直前は規則正しい生活・バランスのとれた食事など健康維持に努め、コンディションを
整えることに専念しよう。そのうえで運動や通学・買い物など日常でなるべく歩く機会を作ろう。
富士登山に適したウェアや用具など、装備をしっかり整えることも登頂成功の大きなポイントだ。
また、新しく購入した装備があれば、事前に使い方をマスターしておこう。とくにトレッキングシューズ
は散歩をかねては着慣らしをしておき、もし靴擦れがおきそうだったら、防止テープなどを用意する。
ストックは自分の身長に合わせたサイズ調整、下山時に役立つスパッツは装着の方法を何度か
確かめておく。さらにヘッドランプは電池の残量や電球の点灯をチェックしておくと安心だ。

ウェア 長袖シャツ (化繊もしくはウール素材)
ズボン (伸縮性があり動きやすい長ズボン。Gパンはダメ)
Tシャツ (綿は不向き。速乾性の化繊素材)
下着 (登山用の化繊やウール素材)
靴下 (綿は靴擦れしやすい。化繊かウール素材)
防寒着 (フリースなど。真夏でも必需品)
雨具 (上下セパレートが一番○)
帽子 (強い日差しをよけ、防寒にも)
手袋 (手の保護と防寒に)
☆サポーター (ひざ痛のある人は登りから装着)
行動用具 トレッキングシューズ (くるぶしまで包むタイプ)
ストック (登山用の伸縮式が使いやすい)
スパッツ (下山時に靴に砂が入るのを防止)
ザック (手提げバックは不可。容量30g前後)
ヘッドランプ (電池と電球は予備があると便利)
水筒 (飲料は1g程度用意。途中の山小屋で補充)
地図・ガイドブック
小物 腕時計
タオル・バンダナ
ビニール袋 (濡れもの収納やゴミ袋に)
ウエストバック・ポーチ (山小屋で身につける)
ティッシュペーパー (出来れば水溶性が好ましい)
日焼け止め・リップクリーム・衛生用品
健康保険証 (写しでも)
筆記用具・携帯電話
☆サングラス・ゴーグル (下山の際の砂埃対策に役立つ)
☆カメラ・フィルム
☆携帯酸素
登山口についたら、まずは30分ほど周辺を散策したり、ストレッチをしながら体を高度に慣らそう。
水も30分前からよく補給しておく。とくにエアコンの効いたバスや車に長時間乗車していた場合、
軽い脱水症状を起こしているケースがあるので、水分補給は重要だ。トイレは各山小屋ごとにあるので
心配無用。ストレッチはねんざなどの怪我の予防につながる。また、富士山では日中、紫外線が非常に
強いため、日焼け止めを塗るなどの対策も忘れずに行っておきたい。
スタートから30〜1時間、体が温まってくるまではごくゆっくり歩くのが基本。富士山の主要コースは
五合目から六合目にかけて緩斜面で、ちょうど良い条件だ。歩行ペースは息が乱れず、軽く汗ばんでくる
程度。ほかの登山者の流れにとらわれず、ペースは自分で決める。また、この間靴ひもの締め加減や
ザックのバランスなども確かめ、もし不具合があったら六合目での休憩時に調整しよう。
六合目後半からは傾斜が強まり本格的な登りになる。平地を歩くときとの違いは、まず靴底全体で
地面をとらえるようフラットに着地すること。姿勢はからだの軸が地面を踏んでいる足の靴底から
頭までまっすぐ垂直に伸びていることが基本。そのうえで足を踏み出すときは一歩一歩、静かに
重心を移していく。歩幅はふだんの半分くらいを意識して小刻みに。前かがみになったり、着地が
かかとやつま先に片寄っていると、疲れやすくバランスも崩しやすいので注意しよう。
六合目からの歩行ペースは呼吸を無理なく続けられる範囲にとどめる。すると、傾斜が強くなるほど
おのずとゆっくりとしたペースになるので、傾斜の緩急に応じて速度を調整するということでもある。
休憩は30〜40分歩くごとに5〜10分程度、このリズムをなるべく維持して登っていこう。休憩地は
山小屋周辺や登山道脇のスペースなど、ほかの登山者の通行をさまたけず、落石の危険のない
場所を選ぶ。また、水分補給をよくして、トイレを我慢しないことも高山病予防につながる。
各山小屋に設置されているトイレにまめに寄っておこう。
※トイレは山小屋ごとに併設されている。
1回¥100程度のチップ制で簡易的な施設だが
トイレを我慢しないことも高山病予防につながる。
長い時間を歩く登山では昼食以外にも休憩ごとにエネルギー源を補給し、コンディションを維持する。
そのための食料を行動食と呼ぶ。早くエネルギーに変わる糖質を多く含む菓子類やフルーツをはじめ
市販のサプリメント食品も汗とともに失われるミネラル分を補給したり、体内に酸素を有効に取り入れ
るものなどは富士登山に有効だ。また休憩時には、のどの渇きを潤す程度に水分を必ず補給しよう。
飲料はスポーツドリンクやお茶など、さっぱりとした飲み口のものが良いだろう。1泊2日では3〜4g必要
となるが、出発時には1g用意し、あとは途中の山小屋で購入すれば重荷にならない。
山小屋では500_gのペットボトル1本¥500が相場だ。(星観荘では¥300での提供です。)
山の気温は、標高が1000b上がるごとに約6度低下する。仮に標高0bの平野部が30度のとき
五合目の気温は17度、八合目では10度、頂上では約6度にまで下がる。一方、気温は低くても
登りでは暑く感じることもある。このように寒暖差の大きい富士山では、複数の衣類を重ね着したり、
組み合わせて、そのときどきの状況に対処する。これが登山における衣類のレイヤード。要は寒暖に
応じて衣類をこまめに脱いだり着たりする。コンディションを維持するコツのひとつだ。
富士登山のアクシデントで多いのは、頭痛・呼吸困難・吐き気・倦怠感といった高山病の兆候。
高山病は酸素吸入によって一時的に緩和することはあるが、登り続ける限り、解消する例はあまりない。
対処の基本は登山を中止して下山すること。高度にして500bほど下ると、たいていは改善に向かう。
ついで多いアクシデントが転倒によるケガやねんざ。この場合、患部の消毒や固定などの応急処置が
必要となる。救急薬品を携行しておくと役立つが、高山病の場合を含めて、河口湖口(吉田口)七合目
と富士宮口八合目にある救護所が心強い存在だ。救護所から離れた場所で緊急を要する重大な
アクシデントの場合は携帯電話や最寄の山小屋の電話から110番通報をして救助を要請する。
金曜か土曜の夕方に五合目を出発して、夜を徹して登り続け、頂上でご来光を望んで下山。
週末の夜行登山は富士山ではよく行われている方法だ。しかし、登頂に失敗しやすいのもこのスタイル。
体力的にハードというだけでもなく、週末の混雑からくるストレスも大きなハードルだ。リベンジのカギは
混雑を避ける、無理のない行程を組むこと。こんどは富士登山のために休暇と予算をあてる。
それを惜しまなければ登頂率はかなりアップする。星観荘では行程作りの相談にも乗っていますので
お気軽にご相談下さい。

憧れだけでは登れない富士山。過酷な登山を経てこそ日本一の頂に立つ感動と
達成感は一生忘れない思い出になる。さあ、富士山に登ろう!!